勝又健志の分析が面白かった話

とつげき東北チームの統計学、それを元にした麻雀AI・NAGAの登場など、ネット麻雀において躍進的なここ10数年。

それを基準として判断する人も増えているだろうが、ひとつ忘れてはならないのがこれらのデータは「天鳳をベースにした統計」という事実だ。

つまり別のケースでは「(天鳳の)統計通りにはならない」状況が考慮されることを忘れてはならない。

 

その点で勝又健志によるMリーガー分析が面白く、参考になるので紹介したい。

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このシリーズはYoutubeチャンネル「麻雀遊戯王」が選手ごとにシリーズとしてアップしているもので、他にも滝沢や黒沢など多数の選手が行っている。

 

何人かの選手を見たが、勝又は「そもそも基準となる部分」を独自に解説している点が興味深かった。

「Mリーガーは全員が高打点を目指す傾向にある」とは渋川難波など他雀士も指摘するところだが、勝又はさらに「そのために受け手は全員が守備・慎重になる傾向もある」と指摘。

そのうえで、「Mリーグでは通常よりも基準が(動画内図説の)左下に寄る」と解説。

 

つまり勝又はMリーグという場においては、通常の麻雀業界の基準値では比較できないと判断しているのだ。

この視点はシリーズを通して見てもなかなか斬新であった。どうしても他選手は与えられた枠の中で「この人はこの辺かなぁ」という程度に留まっていたのだが、勝又は土台となる基準そのものにメスを入れてきた。

ただ、これは他のMリーガーも解説の中で自然と触れている部分ではあった。「いつもならこの人は上のほうなんだけど、Mリーグだとちょっと下のほうになるかなぁ…」といった具合だ。

 

つまりハッキリと言語化するほどではないが、全員が何となく感じ取る程度には違いがあったということだ。

これはMリーグという場が通常の統計だけでは測りきれないことを示唆している。

これについては近年ではコメント欄などでも頻繁に話題に出されるが、「Mリーグ独自の統計を出さなければ答えは出せない」「単純に既存の基準値では判断しきれない」といった指摘が飛ぶ。

 

各選手ごとの「人読み」が入る点もそうだろう。

通常の打牌に加えて、Mリーガーはお互いの傾向を知り合っている。動画内でも勝又が特定の何人かに対して「でも、この人はこういう打ち方をする」と分析している。

これは他のMリーガーにも共通して言えることだ。やはりお互いに研究して手順や癖を把握して、そのうえで自分の押し引きの参考にしている部分がある。

 

勝又の押しや、白鳥の守備もこの分析を聞くと理解できる点がある。

「それは無理なんじゃないか」という押しを見ることはあるが、解説を聞いた後だと「なるほど、その基準で押していたのなら納得だ」と思える打牌がある。

 

勝又のもうひとつ面白い着眼点に、「手牌の持ち方で攻撃か守備かを判断する」というものがあった。

「良い手牌なら誰だって攻撃的になるし、悪い手牌なら誰だって守備的になる。それは人によって変わるものじゃない」「じゃあ、その人が攻撃型か守備型か、どこで判断するかは序盤の牌の持ち方が基準になる」という。

確かに勝又以前の選手は「鈴木たろうさんはメチャクチャ押してくるから攻撃型」「黒沢咲は面前高打点なので攻撃型」といった解説が多かった。

 

しかし、たろうや黒沢も手牌が悪いなら無理な打ち方はしない。これは勝又が指摘する通りだ。

その中で例えば「攻撃的な選手であれば手の中にドラを残す」「守備的な選手であれば危険牌のドラを先切りする」といった判断基準が勝又のもつ基準だ。

これは確かに手牌に左右されない攻撃型と守備型の基準となり得る。

 

先述した勝又の無理に見える押しも、「この選手がドラの先切りをするのは危険牌を離したかったからで、押しているケースではない」といった判断があったのだと推察できる。

ネット麻雀で不特定多数の相手にここまでの読みはできないだろうから、これもある意味でMリーグ独特の視点ということになるだろう。

こういった複雑な要素が絡み合って、「普段ならこれは無いけど、Mリーグならあり得る」といったケースが生み出されていく。これが天鳳で出された統計とは異なった部分となっていくのだろう。