格ゲーのモダンの話

格闘ゲームには最近「ボタンひとつで必殺技が出る」というモードがあるんですが、この機能自体はたぶん2000年代の頃から家庭用ゲームにはありました。

ただそれでネット対戦までできるようになったので話題になってきているというか。例えばKOF15だと〇ボタンをポンポンと3回ほど押すだけで連続技になってフィニッシュの必殺技まで出すことができます。コンボをボタンだけで出せるようになっています。

 

これによって何が起きるかというと、対戦を行うにあたって難しいコマンド入力の練習などをしなくてもいいのです。ゲームをダウンロードしてすぐに対戦できるようになる。

しかも全キャラ共通なので、どのキャラを使ってもある程度は戦える。

やり込みや練習が不要となったのです。

 

格闘ゲームの優劣は「難しい局面で複雑なコマンドを正確に入力できるか?」という技術的な側面がありました。そこに駆け引き、押し引きの要素が加わって勝負になる。

大ダメージを狙って難しいコンボを狙うも、コマンドをミスして相手に逆転されてしまう。そういったドラマもありました。

あるいは見事に成功させて拍手喝采。レッツゴージャスティン!とかね。

 

モダンの登場でこういった場面が減少(無くなることはない、後述)したという指摘もある。それは確かにそうだが、それはある一定層以上での会話だというのもその通りで。

そもそもコマンド入力がわからない観客からしてみれば「今の何がすごいの?」としかならない。「なんか逆転して勝ったね、すごいね」くらいの反応にしかならない。

コマンド入力の難しさを知っている者だけが「あの場面で、あんな難しいコンボを正確に決めるなんて・・・なんて凄いプレイヤーなんだ」と感嘆することになる。

 

だが、それはトップ層の数%のプレイヤーに限っての話で、多くのカジュアルなプレイヤーからしてみれば「何がすごいの?」止まりなのだ。

だからこそ、そういった多くのカジュアルプレイヤーに向けて入力が簡略化されたモダンモードが登場する。

言ってしまえばゲーム側のサポート機能によって、誰でもある程度以上は対戦できるようになっていくという仕組みなのだ。

 

コンボの練習 → 駆け引き → 勝敗

という過程を踏まえる必要があった環境から、

(コマンド入力の簡略化) 駆け引き → 勝敗

という段階へとスキップすることが可能になった。

 

ただし、今のところ環境の条件として「モダンモードは独自のコマンド入力にダメージ量で劣る」という部分がある。

しかし麻雀でもメインを「押し引き」と捉える人が多いように、技術力で勝敗が決まるわけではない。状況判断などで差がつくことのほうが勝敗には関わりやすい。

上位層だけが「そのちょっとが勝敗に関わるから手を抜けない」という領域に突入するのだ。

 

・麻雀におけるサポート機能

現在でも麻雀アプリでは「手積みしなくてよい」「自動理牌」「点数計算」などは当たり前になっている。

さらに「リーチ宣言の表示(聴牌が判る)」「フリテンの表示(チョンボできない)」「鳴き牌の表示」「同一牌の点滅表示」「ドラの点滅表示」などなど。

 

アプリによっては河の牌を手出しツモ切りまでわかるようにしていることもある。

これらは格闘ゲームのモダンなどよりも、かなり先立って実装されていた機能である。

しかし、それによって麻雀の対戦の質が低下したということはない。むしろ新しい才能が生まれている。

 

ないおとんであるとか、天鳳位の中にも「特上卓に入るまで字牌ピンフが付く理由がわからなかった」というプレイヤーもいた。

それでもゲームは成立するし、ある程度までの上位には食い込めるのだ。

もちろん、そこから先はひとつ壁があるといっても差し付かえない。

 

雀魂の王座の間などは顕著で、上記のサポート機能がいくつか失われる。

だが天鳳FF14のドマ式麻雀などを打ちなれた者であれば、ドラが光らないとか、待ち牌が表示されないといったことは普通のことだ。リアル卓の手積みなら猶更。

そういった環境で慣らしてけば雀魂でも少し強くなれることは間違いない。

 

主にドラや河を自分でよく記憶するようになるため、見逃しやポカが減る。

雀魂だと「光る前に切っちゃったのでドラだと気付かなかった」なんてことがあるが、それはシステムに頼り切ってしまったがゆえのミスだ。

「リーチ宣言の表示が出たので聴牌したが、待ち牌が河に全部出ていた」など。

 

それらはサポート機能が無いほど自分で把握しようと努めるためミスは減る。

しかし打つのが難しくなるし、負担が増えるのも確かだ。

私も気が付くと残り枚数を表示する機能にはかなり頼ってしまっているため、河の把握がイマイチなことは多い。

 

ただ一般層にはこのくらいのほうが馴染みやすいのは確かだ。

点数計算ができなくても、手出しツモ切りが見れなくても、とりあえずゲームに参加して楽しむことができる。初手でその段階にしてもらえることが大きい。

あとは数をこなせば慣れて覚える部分も増えるだろう。

そしてさらに上を目指すのであれば勉強が必要で、サポート機能に頼っていても仕方がないことが解る。

 

こういった機能があると「ゲームの質が低下する」という人もいるが、現代でそれは否定的だろう。

まず高度な上位数%になるためには多くのカジュアル層が必要なのだ。その中からさらに上を目指すものが出てくるし、そこからはサポート機能に頼りっぱなしでは勝てないと切り替える者もでるだろうし、押し引きだけで上位に食い込んでくるプレイヤーも出てくるかもしれない。

 

友人がKOF15のネット対戦である相手を「たぶん全部簡略化のコマンドしか使ってないんだけど、格闘ゲームのセオリーというか、駆け引きが解っている人ですごい強かった」と語っていた。

細部の難しいことをやっていなくても、大枠さえ合っていれば上手く型にはまるという典型である。逆にどうでもいい細部にこだわって勝率を落とすプレイヤーのほうが多いだろう。

言ってしまえばサポート機能で簡略化されるような部分は、勝負ごとにおいて「ぶっちゃけどうでもいいくらいの要素」で、本来はそれよりも重要なことがあるのだ。

 

麻雀でいえばそれは押し引きになるだろう。

そしてその押し引きをより正確に、高度に行うためには点数計算が必要であったり、手牌や河の把握を自分で即座にできるといった細部が求められるようになってくる。

特にネット麻雀の場合は時間制限があるため、そこを反射的に判断する速さが求められる部分もある。それもひとつアドバンテージになるのだ。

 

ひとつの情報処理が早ければ、他のことに脳を使える。(カジュアル層の場合はこれにサポート機能が役立っているともいえる)