毎度言っていることですが、勝負事において「押し引き」という概念は常にあります。ただし、それが概念化や言語化されているのは麻雀における「押し引き」というものだけであるように思います。
ですが、勝負師であれば「それ」が存在しているのは理解しています。「この場面でこれをやったら損だな」とか、「こうしたほうが得だったのかな」とか、常に局面ごとに考えることはあるようです。
それがスポーツであれ、格闘ゲームであれ、FPSやバトロワであれ。
現代麻雀がここに行き着いているのは、麻雀というものがシチュエーションのゲームであるという側面が強いでしょう。
他の競技やゲームであれば1時間に一回くらいの選択的な局面を、短時間で作り出して遊ぶことができる。それが麻雀の面白さのひとつです。
「ここで勝負したほうがいいのかな~~」「やめて守備に回ったほうがいいのかな~」「他家の様子を見て大人しくしたほうがいいのかな~」こういったシチュエーションが局ごとに毎回できあがります。
これは他のゲームと比較してもとても面白い部分だと言えます。
格闘ゲームは同じように短期的なシチュエーションが繰り返されるゲームですが、野球であれば試合中にそんな選択的な場面が訪れるのは2時間に数回だったりするでしょう。
Apexのようなバトロワ系のゲームも切羽詰まった終盤にこそ、そういったシチュエーションが多くなりますが、そこまでにかかる時間も30分くらいあったりします。
(でも夢中になってると気が付いたら数時間すぎてる・・・)
卓上ゲームでいえば囲碁や将棋も同じ部類に入るかもしれませんが、局面のスピードは麻雀のほうが早いと思います。また、麻雀は不確定ゲームであるからこそ、判断に揺らぎが生じやすいのも、それらとは異なる部分です。
ともかく麻雀というゲームは、こと押し引きに関しては他のゲームよりも、その概念を学ぶにあたっては良い教材になるのかもしれません。
以下の動画で格闘ゲームの押し引きを「損得勘定やね~」と紹介していますが、これはまさに押し引きそのものです。しかし、それを明確に言語化した概念としては捉えられていないのです。
麻雀打ちにとっては「何を今更」という話に聞こえるかもしれません。(マウント)
麻雀も常にこれだといえます。「得な行動を積み重ねて、損な行動を避ける」、それが押し引きという概念、言語化された部分になるのです。
ただ、それが一筋縄ではいかないのがジャンルを問わず人間側の問題になる。
「必殺技ゲージ溜まってるし、ぶっぱしてぇ~~」と思っても、それよりも小パンチでけん制したほうが得な場面かもしれません。
「スキルゲージ溜まってるし、ぶっぱしてぇ~~」と思っても、それよりもナイフで近接したほうが得な場面かもしれません。
「役満テンパイ、ゼンツしてぇ~~」と思っても、オリたほうが得な点数状況かもしれません。
まぁ、上級者から言わせれば「そんなことで悩むなんて小学生かよ」という例えかもしれませんが、大げさにそこまでではなくとも駆け引きの中でこれが出来なくなるのが人間というものです。
または、以前した掘り下げの話のように、とことん突き詰めた結果「いまのどっちが正解だったんだろうな~~」というところでせめぎ合いを始めるのが上位層の悩みになってきます。
ここまでくると本当に微妙なことが多いです。上記の動画の中でも「だからシチュエーションごとに、そういうのを知っておくことが必要になってくる」「それで損得がわかるようになってくる」と示されています。
これは麻雀ではまさにその通りです。「ドラ1はリーチ」というのは局収支で、数字の上では定石です。しかし例外的に「これは打たないほうがいい」というシチュエーションもあります。
実際には中級者までであれば、その細かいシチュエーションを気にするよりも、統計に従って収支に則ったほうが有利に働きやすいです。
しかし、ある時点からそれだけでは勝ちが安定しなくなる時期が来ます。
そこからはちょっとずつ例外を頭に入れて、シチュエーションごとに対応する必要が出てきます。麻雀において時間をかけて学ぶべき部分はここにあると言えます。
こういった勉強はそれこそトッププロが出している個人の書籍(初心者向けとか何切るとかではない戦術本)に多く紹介されています。
実戦を踏まえたうえでそれらに触れるのが有意義でしょう。
そしてだからこそ初中級者が、最初にそれらの本に手を出してしまうのはやめておけと言われる理由でもあります。(経験値不足で読んでも身につかないし、間違った定石を覚えてしまう恐れがある)