麻雀アプリの煮詰まった環境

初級は初心者が、

中級は中級者が、

上級は上級者が打っている。

 

これが一般的なネット麻雀における段位戦の印象だろう。

他のオンライン対戦ゲームにしてもランクマッチといえば、この印象をもつ人が少なくない。ただし、これも他のゲームも同様にある程度まで状況が煮詰まる(この場合は行き詰まりを意味する)とこの印象とは異なった状況が生み出される。

 

まず一つ目には飽きたプレイヤーがプレイを辞めることで全体の人口が低下する。

二つ目に中上級者がアカウントを作り直して初心者狩りを始める。

三つ目に初心者狩りにウンザリして新規が寄り付かなくなる。

 

大まかにまとめるとこのようになる。これはネット麻雀に限った話ではない。どこのゲームでもある話だ。

 

・戦うのが好きなんじゃねえ、勝つのが好きなんだよ!

これはどのゲームをやっていても大半の人が思うことだろう。

勝つこと以外に「強くなりたい」「強い人と戦いたい」「みんなでプレイするのが楽しい」などの目的を持っているとしても、結果として勝つことは楽しさに繋がる。

 

だが、どの世界でも簡単に勝たせてはくれない。競争社会では最低限の努力をまずしなければ生き残れない。楽して勝利だけを手に入れたいというのは都合が良すぎるのだ。

(そこに相性がいいのがギャンブルではあるのだが…)

 

つまり負けるよりも勝つほうが楽しいが、勝つためには勉強や練習をしなければならない。そして、ゲーム自体の時間が圧迫される。そこまでしてプレイを続けたいと思うライト層やカジュアル層がどれだけいるだろうか?

一時的にのめり込んだとしても、ある一定のところで「何やってんだ自分」「もういいや」となるプレイヤーは少なくないだろう。

 

・ゲーム自体は好きだが対戦にウンザリする

例えばCODやApexといったゲームは、ゲームそのものは楽しいが、プレイするとなれば対人戦は避けられない要素でもある。(bot戦もあるが)

強い人と戦っても勝てないし、一方的に倒されたり煽られたり、同じチームならチャットで怒られたり嫌味を言われたり、何も楽しくない。

 

それならほどほどの初中級者向けのマッチング帯で遊んでいればいいのだが、勝てば自ずと上級者の卓へ放り込まれてしまう。そうするとまた人間性を投げ捨てたようなプレイヤーとばかり当たってウンザリ…。

 

初心者狩りとは異なるが、こういった動機から上級者のマッチングが始まるあたりでアカウントを捨て、新規で始めるのを繰り返している人もいるだろう。

 

・記録の出なかったアカウントを捨てる

麻雀であれば和了率や放銃率、トップやラス率を「魅せる」数字にするために気に入らなかったらアカウントを捨てる。という行為もしばしば見られる。

他のゲームでもミッションによる実績達成であるとか、そのための無敗記録であるとか、そういったものを解除するために何度もアカウントを作り直す中上級者もいる。

 

ともかく、これらの行為も結果として初心者狩りになっていく。

中には「~をしない」といった縛りプレイで上級卓を狙うなど、舐めプと取られても仕方のない行為をするプレイヤーもいる。

 

・繰り返されるアカウント輪廻転生

今回メインとして挙げたいのはネット麻雀『天鳳』であるが、あそこはレビューなどを見ても、実際に打ってみても初心者卓のレベルがかなりバラけている。「本当に初心者だな」という人と「この人は新人ランクなのにかなり打てるな」といったことが、結果だけでなく、打ち筋からも見て取れることがある。

 

アプリのレビューを見るとレーティング(強さの指針となる数字)が下がったからアカウントを作り直して始めた、といった書き込みをいくつか見ることができる。また天鳳自体も半年間ログインしないとアカウントが自動で削除されてしまう仕様のため、意識せずに新規アカウントで始めることになる人も少なくないだろう。

 

このような天鳳でいまどんな現象が起こっているのかというと、まずは「初心者卓でも強さがバラバラ」「相手のランクで強さを測れない」といったことの他に、自分が特別に注視したいのは「アガりは作れるが守備をしないプレイヤーが多い」ということである。

 

・アガる麻雀だけが楽しい人が残った結果

麻雀において「アガるだけが楽しい」というプレイヤーがいて、守備を一切考えず、振り込みなども全く気にしない。段位の結果は長期で見れば勝ち越せない、勝てるときは大勝ちするが負けるときもラス回避は考えない。

このようなプレイヤーは想定される。

 

天鳳の初心者卓にはこういったプレイヤーがかなり発生しているのではないかと思っている。まず天鳳自体が息の長いサービスであるために、15年か20年は運営されている。

その中で「麻雀のアガりだけひたすらに繰り返して上手くなったプレイヤー」というのは発生していると思う。もちろん段位で上に行くにはそれだけでは通用しないのだが、守備は楽しくないと思えば、別にわざわざやりたくないことをしてまでプレイする必要もない。

 

段位を上げることが目的にも入っていないのなら、余計に意識する必要などない。自分が打ちたいように打てばいいだけ、段位戦のセオリーや駆け引きや押し引きなどどうでもいいのだ。

こうなるとバランスは一気に崩壊する。

 

・雀魂でも同じことは起きつつある

以前のトピックで書いた「その時だけ強い人」というのがそれであるが、玉の間以上でも理解できない打ち筋のプレイヤーはかなり増えた。後から配布を見返しても理解しがたい押し引きや放銃が続く。結果として勝っても負けてもデータで見ればひどいもの。

これで長期に渡って勝ち越すのは無理。いわゆる金玉ルーパー(金の間と玉の間をループする中級者を指す)と呼ばれる現象に陥る。

 

だが、これもやはり「麻雀そのものは楽しいがセオリーや押し引きを勉強する気はない」というエンジョイプレイによって引き起こされる。

それ自体を否定することはできないが、段位戦でこれが紛れ込んでくるとかなり厄介で、強い人ほど事故に巻き込まれやすい。

 

強いプレイヤー同士であれば定石から打牌を読むことは可能になってくる。その結果に押し引きが生まれて、より高度な駆け引きが存在する。

だがこれができていないプレイヤーが混ざるとトンデモないことが起きる。

 

親のリーチに1000点のリーチで追っかけする(待ちも別に強くはない)。

オーラスでラス確定のアガリをする。

嫌がらせにもなっていない意味のないカンをする。

聴牌でもないのに無筋の危険牌を切って放銃する(しかも安全牌があるのに)。

 

などなど、およそ上級者卓とは思えないことが頻発する。

ちなみにこれらは玉の間ではなく、王座の間である。

まぁ、玉の間でも同じようなものだが。

 

・玉の間も金の間も大差なくなっている

とにかく聴牌ゼンツだけの麻雀が蔓延っている。

 

安手でかわすとかそういったレベルを超越した危険牌連打の1000点ノミ手。

大明槓しての役なし聴牌

見えてる純カラリーチ。

親のドラ槓に簡単に放銃。

 

どうやってここまでランクを上げてこれたのか不思議なくらい危うい打牌ばかり。

ともかく末期天鳳と同じく攻撃面では形を作れてはいるのだが、「守備」「押し引き」といった概念が存在していない。

短期で見れば成績は良いときもあるが、長期ではズタボロ。放銃率とラス率は高い。(和了率と流局時の聴牌率も異様に高い)

 

だが、それでも中級者以上になれてしまうのが麻雀の運ゲーたる所以だろう。

 

・微差は微差でしかないのも麻雀

特にネット麻雀において長期の成績とは「微差の積み重ね」であると思っているが、しかし現実のプロの世界に目を向けても、雀荘のような場所でも、「微差よりも大勝」という価値観のほうがプラスになりやすい。

 

基本的に「ラス回避」は天鳳と雀魂の世界のことだ。

他ではルールは違う。

 

だから、そういったところから雀魂に流入してきた「麻雀が強い人」からしてみれば、ラス回避を意識しないゼンツ麻雀でもある程度は結果が出せることは知っているのだろう。

 

最近ふと気になったのだが、園田賢や小林剛のような打ち手は非常に細かいところまで気にして打っている。しかし、それが結果に反映されているかというと、やはり「微差」でしかないのだ。「大勝」には遠く及ばない。

個人タイトルやMリーグでの戦績を見ても、トップ取りルールであれば特に「微差」を気にするプレイヤーよりも、「大勝」を狙うプレイヤーのほうが数字を残しやすい。

 

麻雀は基本的に運ゲーで微差を気にしてもどうにもならないというか、結局わからないことなのだから、大きく期待できる打ち方をしていたほうがプラスになる。ということなのかと思う。