成功体験の話

前回の山読みの話。よく実況解説でも「七対子が好きか嫌いか」というのが話題にあがります。つい先日のMリーグでも話題になっていましたが、これとセットで語られるのが「山読み」の話。

七対子が得意な土田プロなどは暗刻手も得意としていて、四暗刻狙いの何切る(場況からの山読み)も見事的中させるなどしています。

七対子が得意だとするプロは山読みに自信のある人が多いようです。

 

私も七対子に苦手意識はないですし、山読みも不得手という認識はありません。

相手の河や打牌を見て「ここの周りは無さそうだな…」と山に残っていそうな牌を選択していきます。もちろん七対子の場合は防御も兼ねて安全牌を優先して残すこともありますし、打点を見て赤やドラを残したりもします。

七対子を好きじゃないという人は読み以前に、そもそも手役として狙うのが狭すぎて好きじゃないということもあります。

 

自分は意地の悪い面もありますので単騎待ちの「そんな牌で当たるのかよ…」という罠を張るのも嫌いではありません。ゆえに七対子もハマり役ではあります。

加えてオーラスで跳満が必要とあらば向かいがちなリーヅモウラウラの七対子狙い。何だかんだ出番は多いのが実情です。

これを苦手だからと避けているわけにもいかないでしょう。

 

しかし、実際には好き嫌いが分かれるわけです。

これには成功体験あるいは逆に失敗体験が大きく起因します。

AさんBさんCさんの三人が麻雀を習い始めて、全員が七対子をやったとします。AさんCさんは成功し、Bさんは全然アガれなかったとします。

 

するとBさんは「七対子なんて狙ってもしょうがないよ」「全然アガれない手役」と言うでしょう。そして七対子に対して消極的になります。

単騎待ちなんかにするよりも広いリャンメンに受けたほうがいいだろうと良形聴牌に傾倒していきます。

逆に成功したAさんCさんは「七対子の単騎待ちは面白いぞ」と積極的に狙うようになるかもしれません。そして「より揃えやすいように山読み・手牌読みを意識しよう!」とモチベーションも高まります。

 

山読みをした結果、Aさんは読みが的中して、Cさんは読みが当たらない展開だったとします。

Aさんは山読みと七対子は有効だとして、Cさんは「しょーもな」となるかもしれません。

誰が正解かはありません。それが麻雀です。長く打ち続ければAさんもやがて失敗が積み重なって「昔は七対子よくアガれたのになぁ…」なんて時期が来るかもしれません。

 

Aさんは七対子を多くアガって順子手を逃しやすい、Bさんは七対子を逃して順子をアガりやすい。

これは麻雀を長く続けるうえで、どちらかは引かざるを得ないものです。両方の美味しいところだけを頂くというわけにはいきません。それを時々で選べるのであれば神です。

 

他のゲームにしても人間というものは観察してみると面白いものです。

どんなに有効な手段であっても自分が失敗すると駄目なものとみなします。

よく配信なんかでもコメントで「この方法が良いですよ!」なんてアドバイスが飛んで、ゲーム実況者が「へ~、そうなんだ」とやってはみるものの上手くいかなった。

そうなると「私はやっぱりいいや~」と効率が悪くとも他の手段を取ることを選びます。(その効率が微差だったりプレイ環境に左右される範囲であれば問題ないことも…)

 

なんだったらゲーム側で用意した正規ルートさえ拒むプレイヤーもいます。

ダークソウルのようなバトルアクションで特定の用意された武器でのみダメージが通る戦闘でも、「なんだよこの武器!使えねえじゃん!よっわ!!」となると、二度とその武器を使いません。

メチャクチャ効率が悪くても通常武器で攻撃し続けて倒したりします。(まぁここまでくると意地というか)

 

FPSでも強い武器を避けるプレイヤーはいます。格闘ゲームでも強いキャラを避けたり。

それは自身のこだわりで「みんなと同じの使っても面白くないから」であるとか「実際に使ったけど合わなかったから」というのであれば判ります、

しかし、そこまでやりこんで結論を出す人は少ないです。

 

何故ならば大半の人はそこまでゲームをやり込みません。

何百回もプレイして検証した結果、「この武器は合わないな」というよりも。

1~2回プレイして「上手くいかなかったのでやめ」というほうが一般的だと言えるでしょう。

 

麻雀においてもそうですが「100半荘打って収支を出す」とか、「1000半荘で平らになる」なんてことは、一般的にやる人はいません。

他のゲームでもそこまでやり込んでいる人は相当なマニアです。

普通は1~2時間ゲームをやるだけでも、その時間を作るだけでも大変だったりします。それだったら他のことをしたい人もいるでしょうし、何もせずに休みたい人もいるでしょう。

 

以前の麻雀講座系Youtuberの配信でも「年50半荘しか打たない人から見れば、1000半荘で平均出してって言われても、それ何年分だよって話でw」と言われていましたが、その通りです。

他のゲームにしても最初に成功するか失敗するかだけで判断する人は少なくないと思います。

それを数限りなく検証して「最初は失敗続きでダメかと思ったけど、続けていたら上手くいくことが多かったので有効な手段だった」なんて検証結果を出せるのは一部の研究者だけです。その手順というか、習慣が身についている人間は。

 

生物や化学の実験にしても、「最初の1~2回で失敗したから無効」とはいかないのが常識です。

しかし、その思考は一般的とはいえない。

麻雀を初心者に教えるときも、最初に成功するか失敗するか。ここは大きな壁になると思います。

 

入り口にするだけなら成功してくれれば簡単なんですが・・・。

長く続けるのであれば成功体験が足を引っ張ることもあります。「成功体験は良いもの」とは限らないのも難しいところです。