卓上遊戯と賭博の話

将棋囲碁チェス麻雀と、卓上遊戯には常に賭博行為が付きものである。

個人間の軽微なものもあれば、碁会所や雀荘のような店ぐるみで行っている場合もあり、ときには刑法185条により賭博行為の取り締まりを受けることもある。

日本は基本的に民営によるギャンブルを許してはいない。賭博行為には厳しいお国柄でもある。

 

パチンコ店などは風営法を基に経営しているが、実態としては三店方式による賭博行為が日常化しており、雀荘のチップの賭け合いなども不思議と思う人は少ないだろう。

それとは別に公営のギャンブルがあり、競艇・競馬・競輪などが当てはまる。これらは国が管理して運営するという前提で成り立っている。

実際にはそうしないと暴力団など反社会的な組織が仕切ることになり、八百長出来レースが当たり前になったり、払い戻しがきちんと行われなかったり、組織の資金源になってしまうなど問題が多発する経緯からだ。

(まぁ国が運営してもこういった問題は完全には無くならないが・・・)

 

格闘技界もこれに近い状態には常に晒されている。興行として大きくなると、そういった反社会的な組織が噛んでいることが明らかになって解散させられたり、興行を停止させられた団体も過去に少なくない。

とかく、こういった興行には反社会的な組織や人物の関りが取り沙汰されて台無しになりがちなのである。

 

麻雀がMリーグとして発足するにあたっても、これを懸念してスポンサーにはなりたくないと取り下げる企業が多かったという。

麻雀、ギャンブル、賭け事、違法行為、反社会的行為。こういった印象が大きかったのだ。

それは現在で見ても変わっていないと思う。「麻雀」といえば「賭け事」と連想する人は多いだろう。

 

麻雀もいっそのこと競馬などのような国営のギャンブルになってしまえば後ろ暗いこともないのだが、そうもいかない。

協会などが大会を開催して長い年月が経つが、そのイメージに変化は無かった。そこに変化を与えたのがMリーグだと思う。

一般企業が多く協賛し、これまでの後ろ暗いイメージから脱却したように思う。

 

・今後まだ数十年は「麻雀=賭け事」は付きまとう

私が子供の頃には将棋というものはNHKでプロ同士の放送対局が行われ、新聞などに棋譜が載り、メディアでプロ棋士が受け答えする環境があった。

そのため私は将棋に対して「賭け事」という印象を持っておらず、むしろ市井でそういった行為があると聞いたときは驚いたほどだった。

私個人としては「勝負事」は好きなのだが、「賭け事」は別に好きではないのだ。これは過去のトピックにも何度か書いている。

 

将棋囲碁チェス麻雀などにしても、別に賭けなくても十分に面白いのだ。

だが市井では小さいレートにせよ、個人間にせよ賭け事が行われる。

MTGなどのカードゲームも、勝敗でカードを賭けたりする行為は見られる。

 

勝負と賭けは別の行為なのだが、一般的には一緒くたに考えられてしまうことが多い。そして少なくとも、多くの割合で人が好むのはギャンブルであり、勝負ではない。

私は別にギャンブラーを嫌っているわけではないが、もともとスポーツ畑の人間なので「なんで賭けないと面白くないのか解らない」というのが正直なところだ。勝敗があれば十分だと思うのだが・・・。

報酬が欲しいのであれば働いたほうが早いし確実だ。その余暇としてギャンブルがあるのなら解るのだが、博徒の多くはこれが逆転している。

 

そもそも「生粋のギャンブラー」なんてものはフィクションの世界にしか存在できない。パンチコやスロットで稼いでいる人間も、いずれは破綻する。違法行為やギリギリの行為を繰り返して食い繋いでも先は無い。

賭けというのは基本的に胴元が収支をプラスにして、客側は長期的にはマイナスにしかならないのだ。

だから娯楽にしかならず、生業にはならない。生計を立てている人間は確かにいるが、他に配信やライターの仕事などを持っていることが多い。その分野に詳しい、という意味でプロは存在する。

 

世界があと1000年進んでも賭博行為は無くならないだろう。なにせ1000年前だって同じ、2000年前でも同じだったのだから。

麻雀の話に戻そう。

麻雀界のギャンブルのイメージもまだしばらくは払しょくされないだろう。

 

一般的なゲームとして認知されるようになったとしても、それはここ20年ほどの新規や若手を中心にした考え方で、50代以上の人間からしてみれば「麻雀なんて賭け事に決まってるだろ!」という認識は消えないのである。

歳を取ると人間は情報の更新ができなくなる。昔の認識のまま長い老後を過ごすことになるのだ。

つまり、そういった世代が刷新されない限り世界は変わらないのである。

 

ストレートに言ってしまえば、そういった世代が鬼籍に入り、麻雀をゲームとして見て育った世代が台頭すれば「麻雀=賭け事」といった認識は薄れていくだろう。

今はまだその過渡期、その入り口といった程度だ。

 

じゃあ、上の世代のジイサマ達を説得して「麻雀はもうギャンブルじゃないんだよ」と説得するかと言われたら、それをする効力は薄いだろう。

こういったことは常に時間が解決するのだ。世代ごとの価値観というのはそれほどまでに根強い。

ただ、Mリーグ発足のために尽力した先駆け的な人々の挑戦は評価されるべきだ。この効力の薄い部分へと挑んだのだから。他にもネット麻雀の普及など時代が味方してきている雰囲気はある。

 

そのきっかけがあって、いまは時と共に入れ替わりを待つフェーズになっている。

もしMリーグの運営や選手が(麻雀以外でも)違法な賭博行為・・・なんてニュースが流れたら、それだけでこの環境は瓦解するだろう。

「やっぱり麻雀は囲碁や将棋のように競技化は図れない、賭博の分野なんだね」と歴史が逆戻りしてしまう。